林海象監督とサンセバスチャン国際映画祭の思い出
本日は番外編です。
昨日、「私立探偵 濱マイク」シリーズなどで知られる林海象監督が演出を手がける
舞台「かげぜん」を鑑賞しました。
紀伊国屋ホールに到着すると、入り口で林海象監督が迎えてくれました。映画『探偵事務所5』でもお馴染みの「5」のナンバーが入ったネクタイを着用した正装姿で。
演劇界では「二日目芝居」という言葉があります。初日の緊張感から解放された二日目は、鬼門だという意味です。「その伝説を超えるからさ」と、林監督。
しかも稽古当初は上演時間2時間15分だった芝居を、テンポ良く、間を詰めたところ、約2時間に収まったというのです。人間、やれば出来る!
林監督を一番最初に取材したのは、「私立探偵 濱マイク」シリーズだったと思います。
一番の思い出は、2008年の第56回サンセバスチャン国際映画祭に一緒に参加したこと。
歴史ある同映画祭で「日本のフィルム・ノワール」特集が行われることになり、私も映画祭に招待していただきました。参加監督は林監督をはじめ、こちらの面々。
後日、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の若松孝二監督と「女囚さそりシリーズ」の伊藤俊也監督も合流しました。かつてテロ事件が頻発したバスクに、よくまぁ反社集団と見紛う方々を呼んでくださったと映画祭の勇気に感謝。
現に望月六郎監督(写真右端)はパリの空港で税関に引っかかりました。
真面目な望月監督は初のスペイン、しかも激動の歴史を歩んできたバスク地方を訪問するとあって、スペイン史を記した分厚い歴史書を機内で学習していました。税関職員はそれに目を付け、中身をパラパラとチェック。いけないモノが中に仕込んでないか、疑ったようです。さすが税関。目の付け所が良いですね(笑)。
昨今、日本から国際映画祭に参加する方々が増えましたが、自分たちの上映作品が終わったら、パパっと帰国してしまう人たちがほとんどで、取材する側の我々とも、ゆっくり話をする時間はありません。
でも一昔前は日本から参加した人たちが入り乱れて食事をしたり、呑みに行ったりすることがしょっちゅう。特に旧市街にBARが立ち並ぶサンセバスチャンは”呑みニケーション”の格好の場。
数ある中でも、良いBARを発見するのに長けているのが、京都・BAR探偵(https://kyoto.bartantei.com)のオーナーでもある林監督です。観光客で賑わう洗練したピンチョスを提供する店ではなく、地元の人たちが集うハモン・イベリコ(この店は5Jを使用)や魚介料理と行ったシンプルな地元料理が文句なく美味しいという店をチョイスするあたりが素晴らしい。
連夜、良い感じで映画談義で盛り上がっていたところ、『つぐみ』などで知られる市川準監督(1948-2008)の訃報が飛び込んできました。そこで急遽、パリのキノタヨ映画祭で一緒になり、親交を深めたという林監督にコメントをいただき、記事にすることに。
今だから書いちゃいますけど、行きつけのBARで林監督を捕まえて、そこで取材しました。
そのまま皆で、市川監督に献杯です。
あれから12年。
同じくサンセバスチャンで貴重なお話を伺った若松孝二監督も2012年にこの世を去りました。
日本映画界も良くも悪くも大きく変わりました。
そんな中で、林監督が手掛けた舞台「かげぜん」は戦中が舞台。基本的には人情劇ですが、市井の戦争に対する本音や特高の暴力的な捜査も盛り込まれています。保守からすれば反社的な。
ルックスだけじゃなく、心も粋です。林監督。
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