”勝手に”『映画の朝ごはん』公開記念!海外のロケめし事情・台湾編

 尾野真千子主演『トロッコ』(2009)は、日本と台湾が舞台です。

 台湾は日本統治下だった影響で、撮影現場でも日本と同じく弁当が浸透しています。一つ違うのは、アツアツ。

 鶏拝(チーパイ=フライドチキン)はパリパリ

弁当店のサービスで、ヤクルトがおまけについてくることもありました。

 朝の撮影では、ミルクティーが配られたことも。

  さて本作はスタッフ・俳優とも日台混成チームです。しかも名門・北京電影学院留学経験を持ち、中国圏での撮影現場に数多く携わってきた片原朋子プロデューサーの尽力で、台湾のスタッフは撮影の李屏賓氏をはじめ侯孝賢監督組の皆さんという贅沢な現場でした。花蓮での撮影初日と2日目の夜は、日台の親睦も兼ねてレストランを貸し切っての食事です。


 メニューも、台北では食べたことのないガチョウ肉とか山菜を使った料理が出てきます。

 単なる宴会じゃないか!

と思うかもしれません。でも前に取り上げた岡本喜八監督『イースト・ミーツ・ウエスト』の現場しかり、多国籍チームでの撮影現場では同じ食卓を囲んで交流を深めることの重要さを実感します。 特に本作の場合は日本からの子役が2人参加。慣れぬ異国で、外国人に囲まれての撮影に緊張したのでしょう。撮影中に鼻血が止まらなくなるというハプニングもありました。

 そんな”はじめまして”の面々が、この食事をきっかけにグッと距離が縮まったのです。

 ただ残念ながら、日本ではなかなか飲食での交流に厳しい目が向けられます。

 それを象徴するのが、政府の出資金と民間の出えん金で運用されている独立行政法人日本芸術文化振興基金が実施している日本映画製作支援事業です。

 同支援事業は、企画から完成まで映画製作にかかる経費を文化庁の予算内で支援するもの。しかしその経費に「社会通念上、公的な資金で賄うことがふさわしくない」として 打ち上げ費 や飲食に係る経費は収支予算に記入できません。つまり撮影期間のロケめしは経費として認められないのです。スタッフ・俳優は撮影期間中拘束されているワケですから、その間の食事は必須であるにもかかわらずです。理由は、それを認めると飲酒も計上するから……らしいです。

 酒は百歩譲って除外するとしても、せめて日々の食事代ぐらいは必要経費として認めるべきでは?と思うのは、映画関連の仕事に従事している筆者の贔屓目でしょうか。でもこういう労働環境の基盤となる部分を行政が支持すれば、製作現場の意識も変わっていくのではないかと思うのです。



中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

映画ジャーナリストの中山治美です。 1991年に初の海外旅行でケニアを旅して以来、仕事やプライベートで随分とあちこち旅してきました。 でも齢50歳を超えて体力的に限界が……。 そろそろ終活⁉︎と思い、 記録に残すことにしました。 2024年4月からは下記で更新。 https://ameblo.jp/haruminakayama-555/

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