”勝手に”『映画の朝ごはん』公開記念!海外ロケめし事情・インド&タイ編
インド映画の撮影現場には、思わぬ形でお邪魔しました。
映画『ジーンズ〜世界は二人のために〜』(1998)の日本公開時のことです。配給会社から「現地で主演のアイシュワリヤー・ラーイのインタビューをしませんか?」とお誘いを受けました。
当時、日本はラジニカーント主演『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)が大ヒットし、何度目かのインドブームが到来中。その『ムトゥ』を手がけた配給会社が次に目を付けたのが『ジーンズ』だったのです。加えてアイシュは、1994年のミス・ワールドで世界一に輝いた注目女優。これは行かねば!です。
ところがインド・ニューデリーに着いてビックリ。
取材する旨は先方に伝えているけど、最終的な確約は取れていないと。そこで新作映画を撮影中のアイシュに近づき、ご機嫌を伺うというのです。へっ?
かくして撮影現場に行って遠くから見学したり、撮影から戻ってくるアイシュをホテルのロビーで待ち伏せして、花束と彼女の好きなチョコレートを渡して「私たち、日本からあなたに会いにきましたよ」アピール作戦が始まりました。
これが功を奏したのでしょうか? 無事に任務終了。
いまだに納得できない部分はありますが、撮影現場も見られたし、合間にできたばかりで高級だったインドのMcDonaldに行ってマハラジャマックも食べられたから、まぁいいんですけど。おおらか過ぎる時代の話です。
というわけで見学したのはアイシュ&アニル・カプール共演『Hamara Dil Aapke Paas Hai』(英題『You Have My Heart』・2000)の、豪華なお屋敷でのシーンでした。
残念ながらケイタリングは見られなかったのですが、インド映画の現場でお馴染みのあの方は発見! チャイ係です。
ご存知、チャイはインドの国民的ドリンク。どんなに暑い日でも温かいチャイを呑むのが日課です。それは撮影現場でも変わらず。専用スタッフが常駐して、仕事中の俳優・スタッフたちに配ります。
それはチャイだけでなく、カットフルーツやスイーツも。撮影中のカプールさんもパクリ。
温かいチャイは暑さで体内にこもった熱を発汗させる効果があり、チャイに入っているスパイスは整腸作用があります。フルーツは喉の渇きとビタミン補給。そしてスイーツに使用される砂糖は、何かと悪者にされがちですが、独立行政法人農畜産業振興機能のHPによると”脳の健康や心の充足には必要な食品”と記されています。
つまりチャイ係はスタッフたちが過酷な撮影を乗り切れるよう、健康を見守る大切な役割をしているのですね。
このお茶専門スタッフはタイ・チェンマイで撮影が行われた柳楽優弥主演『星になった少年』(2005)の現場でも活躍していました。
タイも年間を通して蒸し暑い熱帯モンスーン気候です。ここでも炎天下の中、タイ人スタッフのためにホットティーが振る舞われていました。
もちろんお茶だけでなく、フルーツやサンドウィッチなどおやつをこまめに配布。
ついでに象さんも、トウモロコシでエネルギー補給。
香港映画でも「茶水係」という専門スタッフがいます。
2018年には香港版アカデミー賞こと香港電影金像奨で、1980年代から香港映画界を支えていた茶水係の通称”ポーリーン姉さん”に専業精神奨が贈られました。
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この粋な計らい。見習いたいものです。
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