掘り出し物の宝庫!産業・文化短編映画の祭典・映文連アワード2023
産業・文化短編映像コンペティション「映文連アワード2023」(主催:公益社団法人映像文化製作者連盟)の表彰式が11月27日に、東京・六本木の国立新美術館講堂で開催されました。
筆者はソーシャル・コミュニケーション部門(教養を目的とする作品や社会性のあるテーマを広く一般に伝えるための作品)の第二次審査委員を務めさせていただきました。
今年の受賞結果はこちら。
受賞者の皆様、おめでとうございます。
もともと映文連は、昔の文化映画や、教育・教材映画などの製作に従事していた映画人が発足した公益社団法人です。それが時代を経て映像コンテンツの活用が広がり、映文連アワードの対象も昨今注目のブランデッドムービーに展覧会などの映像演出、テレビドキュメンタリーまで様々。審査する方も新たな映像の活用法や最新技術を知り、さらに企業や行政が今、何に向かって取り組んでいるのかも見えるので、発見と驚きの宝庫で刺激になります。
そんな中、今年の最優秀作品賞(グランプリ)に選ばれたのは、自宅に引きこもりながら創作を続けるアーティスト西成一也さんに密着したNHK Eテレ「人知れず表現し続ける者たちⅣ」。
ディレクター・撮影は、プラネタフィルム(株)の伊勢朋矢さん。祖父の伊勢長之助さんも、父親の伊勢真一さんもドキュメンタリー映画監督という、生粋のドキュメンタリスト。受け継がれた伊勢家の才能恐るべし!の存在なのです。
伊勢さんが同賞を受賞するのは2019年の「新日本風土記 佃・月島」続いて2度目。同作も3年に一度行われる住吉神社の例祭を通して、変わりゆく東京の街の中で、江戸時代から続く歴史と文化、人情を守り続けている人たちを追ったもの。その時も、カメラを向けていない所でどれだけこの街に通い、人に触れ、信頼を得たのだろうか?と、舞台裏を想像せずにはいられない映像ばかりで、同じ取材をする人間として嫉妬と羨望入り混じりで鑑賞したのを覚えています。
「人知れず表現し続ける者たちⅣ」は西村さんとの1対1の取材なので、より一層、伊勢さんのドキュメンタリストとしての姿勢が色濃く出ています。そもそも西村さんは孤高のアーティストです。
怒りや葛藤といった感情の全てをキャンバスに放出するかのような西村さんの創作活動に寄り添いながら、西村さんの人生はもちろん、人にとってアートとは何か?という本質まで導き出しているように思います。
ちなみにこの日の表彰式に伊勢さんは欠席しました。また新たな取材のために、遠方に出かけているそうです。お会いしたことはないですが、伊勢さんらしいと納得してしまいました。
また、ドキュメンタリー映画『ショージとタカオ』(2010)井手洋子監督の「木版摺更紗 鈴田滋人のわざ」がソーシャル・コミュニケーション部門で部門優秀賞を受賞しました。
残念ながら井手監督は2023年8月13日に逝去されました。享年68。筆者は、『ショージとタカオ』が出品されたドバイ国際映画祭でご一緒しました。
(『エンディング・ノート』の砂田麻美監督と井手洋子監督)
病を押して、被写体に寄り添い、最期まで丁寧な取材をされた井手監督。この場を借りてご冥福をお祈りします。
この井手監督の作品の製作会社は桜映画社という記録映画を作り続けている老舗です。ほか、同アワードの常連として毎日映画社ともう一つ、あの三角マークに波ざっぶんのオープニング映像でお馴染みの東映。教育映像の制作で知られ、今回も多様性をテーマにした『バースデイ』がソーシャル・コミュニケーション部門の部門優秀賞、『自由と人権を求める人々の叫び ウイグル編 ~私たちに問いかけること~』が優秀企画賞として特別表彰されました。
『バースデイ』は東映のキャスティング力を生かして、女優・鈴木砂羽さん、モデル・女優として活躍する坂本 澪香さん、バイプレーヤー菅原大吉さんらが出演。一方、『自由と人権を求める人々の叫び〜』は、中国によるウイグル族弾圧の実態について当事者たちのインタビューなどを交えて告発するもの。両作とも昨今の社会問題に切り込んだ野心作で、ぶっちゃけ、東映本体の作品より見応えあるんじゃない?と思ってしまいました。
あの著名人が、こんなところで⁉︎の作品は他にもあります。
優秀企画賞として特別表彰された岐阜県瑞浪市PR動画『奇跡の化石』です。
謎の奇獣に扮しているのは、俳優池田成志さん。
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