天賞堂盗難事件がまさかの香港映画に!

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大阪アジアン映画祭では、よく思わぬ日本と出会うことがあります。

香港の春節に公開されたユエン・キムワイ監督『盗月者』もその一つ。

香港の窃盗団が、東京・銀座の高級時計店を手荒な手段で襲撃するアクション・サスペンスです。

最初は香港の人気グループMIRRORのメンバーである、盧瀚霆(アンソン・ロー)、呂爵安(イーダン・ルイ)、姜濤(ギョン・トウ)の出演作だということの方に気に取られていました。

悪徳時計ディーラーを演じるギョン・トウ(写真右) (C)2024 Emperor Film Production Company Limited MakerVille Company Limited All Rights Reserved


でも、物語のモチーフにしているのは、この事件ですよね!?

⚫️銀座の時計窃盗、3人に実刑判決 香港の裁判所

当時のニュース映像がすでに映画のワンシーンのようですが、映画そのものも、窃盗団のメンバーに金庫破りのプロや時計職人がいるという精鋭チームによる驚愕の計画や、時計コレクターたちの熾烈なお宝争奪合戦、さらに我が日本が誇るタカハシレーシングによるスリリングなカーアクションも加わって、往年の香港映画を彷彿とさせる極上のエンタメに仕上がっています。

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そこで気になるのが、どこまでがリアルで、どこまでが創作か。

上映後のQ&Aで、ユエン監督が制作の経緯を明かしました。

まず、天賞堂事件をモチーフにしているのですが、興味を抱いたのは、犯人逮捕直前に香港で起こった事件。白昼、郵便局職人2人が4人組に襲撃されて、郵便配達袋2つを盗まれたのです。6時間後、配達袋は発見されたものの、荷物のうち20個が開封済み。その荷物はいずれも同じ住所宛のものだったというものです。(*のちのその住所は、主犯格が潜伏していた公営住宅であることが発覚)。

「このニュースを聞いた時、2人のポストマンを襲うのに4人も必要?と疑問に思いました。その4日後、警察が犯人を逮捕したわけですが、実は彼らは天賞堂の時計を盗んだ犯人で、日本の素晴らしい郵便局のシステムを使って200本以上の時計を香港に持ち込んでいたのです。劇中ではキャラクターの設定をちょっと変えていますが、(グルだった)郵便職人が裏切ったため、郵便物を強奪するという手段に出たようです」。

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このエピソードを核に、以下の史実や時計にまつわる物語などからヒントを得て、ユエン監督が共同脚本を手がけたそうです。

⚫️ベイカーストリート強盗事件

⚫️オメガ/スピードマスター(1957年)|月へ飛び、月に降りた。人類の歴史的瞬間に立ち会った腕時計【ロングセラー物語】

⚫️ピカソの腕時計が2800万円超え。記録的な結果を生んだ時計オークションを振り返る

⚫️金庫を「守る側」と「攻める側」の攻防 どんな仕組みも、問われるのは「人の信用」


あくまでフィクション。

だけど、観客にリアリティーを感じてもらうために練り上げられた脚本に脱帽です。

さらに東京・銀座や川崎など、1か月間日本ロケを敢行しています。

「川崎の夜の撮影ではハプニングがありました。ここでは詳細をお話しできないのですが(苦笑)。さらに撮影の1ヶ月後、銀座の時計店がまた襲われる事件が起こりました。本当にすいません」

と、ユエン監督は恐縮しきり。

ユエン監督(写真左)と日本の強面のお兄さん役で出演した俳優・田邊和也


ご存知、日本では今、高級腕時計を所有者から預かり、貸し出すシェアリングサービス「トケマッチ」を巡って、詐欺・横領事件が問題となっています。

⚫️「トケマッチ」腕時計の無断売却 額は少なくとも1億5000万円

⚫️「トケマッチ」運営会社元代表ら2人に旅券返納命令 国際手配も要請


本作を見てから、もの凄い闇の組織が動いているのではないかと事件が気になって、気になって。

被害に遭われた方の心中をお察しすると同時に、事件が無事に解決することを願わずにはいられません。

中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

映画ジャーナリストの中山治美です。 1991年に初の海外旅行でケニアを旅して以来、仕事やプライベートで随分とあちこち旅してきました。 でも齢50歳を超えて体力的に限界が……。 そろそろ終活⁉︎と思い、 記録に残すことにしました。 2024年4月からは下記で更新。 https://ameblo.jp/haruminakayama-555/

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