映画『Maelstrom』でユニバーサルな社会とは?を考える①
映画作家・アーティストの山岡瑞子さんのドキュメンタリー映画『Maelstrom マエルストロム』(2022)が、12月8日まで横浜シネマリンで公開中です。
山岡さんはN .Y.の美大卒業後の2002年に、交通事故に遭い脊髄損傷の重傷を負います。
以来、まさにタイトル通りの”大渦巻き”に流され、ままならない自分の身体と向き合いながら、
アーティストとしての自分の生活を取り戻したいともがいた日々が綴られています。
山岡さんには映画関連の試写やイベントで良くお会いします。
日本の取材現場、いや映画祭でも、車椅子利用者はまず見かけません。筆者はスポーツ紙出身で、
今も取材現場に行くことが好きなので映画ジャーナリストと名乗ってます。
一方で幼少期から怪我が多く、骨折6回、交通事故3回。さらにバスケットボール中の事故で、両足の左右前十字靭帯損傷という古傷も。プロレスラー並みの怪我歴です。
もしも動けなくなったら、もしも目が見えなくなったら、引退するしかないのだろうか?という不安をいつも抱えていました。
そんな時にお会いしたのが、ベネチア国際映画祭でいつもミニサイクルに乗って会場内を移動している地元イタリアの映画評論家であり、山岡さんです。
前者の評論家はおそらくSGA性低身長症。本業は社会の教師らしいのですが、南イタリアの方から自分で車を運転してベネチアまでやってきます。
山岡さんも自宅近郊のイベントには、マイカーに重さ約30kgの電動車椅子を積んで移動しています。それどころか、海外留学に山形国際ドキュメンタリー映画祭や韓国の釜山国際映画祭まで!
その山岡さんの経験とお知恵を拝借し、筆者がシネマトゥデイで連載していた映画祭レポート「ぐるっと!世界の映画祭」で、東京国際映画祭のバリアフリー対策を検証していただいたことがあります。
⚫️東京国際映画祭のバリアフリーは?東京パラリンピック前に考える
これ2019年のレポートなのですが、今読み返すと、もはや東京国際映画祭はバリアフリー上映も行ってないし、今年の映画祭で何か取り組みを行っていたかと言えば皆無。
あえて映画祭で言及することはないという判断なのでしょうか? 喉元過ぎれば……という日本社会の悪い風習が出ているような気がしてなりません。
あぁ、思わず愚痴が💦
閑話休題。
山岡さんは本作を制作し公開することの意義について、先日行われた日本外国特派員協会
FCCJでの会見で次のように述べました。
「私は障がいを持っている人が、外に出て同じ人間だと思ってもらうことが大事だと思っています。
街にいることが特別ではない。そうなれば良いと思っているので、人に知ってもらうことの一つの手段としてこの映画を作りました」。
ただ上映劇場のシネマリンは、階段しかなく、館内もバリアフリー対応になっていません。連日、山岡さんとゲストのトークが行われる予定ですが、そのハードルは超えられるのでしょうか?
山岡さんの起こす行動の一つ一つが、映画業界に新たな風を起こすことを期待しています。
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