山形国際ドキュメンタリー映画祭2023 ②

 今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭2023(以下、YIDFF)では、山形駅西口に2020年5月に開館したやまぎん県民ホールイベント広場に野外スクリーンが登場しました。

 題して「野外スクリーン!で東北を魅る」。

 会場にはフードカーも登場し、星空の下で映画を見るなんて「あら、ステキ!」と思うでしょう。

 しかし、いくら温暖化とはいえ10月の山形です。おまけに筆者が訪れた10月7日は雨で、気温13℃。トークセッション登壇者もステージ上で傘をさしながらの進行です。いや、もう寒いのなんの……。

 


 同じく雨天となった10月9日はやまぎん県民ホール内に会場を移して上映したそう。開催方法は今後の課題にしていただくとして(苦笑)、企画自体は非常に有意義なものでした。

 実は、本企画の主催は経済産業省で、同省が映像や芸術文化を通して福島通りの新しい街づくりに挑む「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」、通称「ハマカル」のPRイベントでもありました。

 「ハマカル」を立ち上げたのは経産省の若手の有志職員です。2022年夏には地元や全国から集まった子どもたちと福島発の映画を制作する福島浜通りシネマプロジェクトを実施。2023年6月15日には、彼らの活動を推進すべく大臣官房福島復興推進グループ内に福島芸術文化推進室も設置され、アーティスト・イン・レジデンス事業「ハマカルアートプロジェクト」も動き始めています。

 この日のイベントは「YIDFFや東北地域で上映活動を行う人々とともに、映画を通じた地域コミュニティの創成にあたって直面する課題を検討し、意見交換を行う場所を持つことが目的」(YIDFF公式パンフレットより)。

 

 登壇者はYIDFFや震災関連事業に関心のある方ならお馴染みのメンバーだったのですが、総合司会を務めたのが経産省職員。

 登壇者の方々が、実はすでに横の繋がりがあって、互いの上映活動の際に協力しあっていることに感嘆したり、YIDFF名物の夜の社交場である新・香味庵クラブにも足を運んだようで、

上映作品の監督や観客たちが缶ビールや日本酒片手に交流している様子にいたく感動した様子。


 映画祭に行きまくりすぎて、いささか感動が薄れている筆者としては、その声は新鮮でもあり、YIDFFの魅力を再認識されてくれるものでした。

 他の職人も通行人にチラシを配布したり、雨で濡れた椅子をタオルで拭いたり、来場者に肘掛けやカイロを配布したりと細やかに活動。聞けば彼らは、映画関係者が開いている勉強会にも積極的に参加しているとか。

 芸術大国であるフランスやお隣の韓国に比べて文化政策が貧弱と言われる日本ですが、こうした現場を知る官庁の皆様がいずれ力になってくれればと願わずにはいられません。

 ハマカルは、東京国際映画祭2023でもスペシャルトークセッションを開催します。またハマカルアートプロジェクトの第一次公募採択者がこのほど発表され、YIDFF 2023で新作『GAMA』が上映された映像作家の小田香監督が、師匠であるハンガリーのタル・ベーラ監督とともに選ばれています。

 あれ? タル・ベール監督は『ニーチェの馬』(2011)を最後に引退を表明しているはずなのですが……。

 福島から目が離せません。


追記;タル・ベーラ監督の7時間19分の大作『サンタンゴ(1994)がAmazonプライムに登場。遂に見るか? いや、見る時間はあるのか? わたし!

中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

映画ジャーナリストの中山治美です。 1991年に初の海外旅行でケニアを旅して以来、仕事やプライベートで随分とあちこち旅してきました。 でも齢50歳を超えて体力的に限界が……。 そろそろ終活⁉︎と思い、 記録に残すことにしました。 2024年4月からは下記で更新。 https://ameblo.jp/haruminakayama-555/

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